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「見える化でわかる限界利益と付加価値」!財務会計と管理会計がわかる本

  • 2022年11月24日
  • 2023年1月31日
  • 雨読

『「どうしたら利益がでるか?」経営にたずさわる人が持つ共通の課題である。この課題は、経営にたずさわる人だけの問題ではなく、会社で働くすべての人は、最終的には利益に向けて仕事をしている。(はじめにより)』

この文章で始まる本書は、利益を営業利益についてではなく、限界利益と付加価値に焦点を当てることで、未来の利益を増やすことができると論じている。

本書を読むと、事業の意思決定をする際の重要なファクターが限界利益であり、さらに利益を生み出すのが付加価値であることがわかる。

 

限界利益と付加価値を見える化することで利益を増やす


この本の著者、橋本賢一氏は日本能率協会コンサルティングに15年、生産性向上・原価管理テーマを中心にチーフコンサルタントとして従事。原価関連の著書は多数。(著者略歴より抜粋)

本書は、利益とは何か、利益を生み出す売上、経費について限界利益や付加価値、変動費、損益分岐点分析、さらに実際の活動事例を挙げながら、利益を創出するための基本を解説している。

本書は利益の見える化をうたった第1章から設備の無駄を見える化した第9章までで構成されている。

さらに各章ごとにその章の狙いを表示して、その章のテーマを具体的に示しているのでわかりやすい。

例えば第1章の『「率」よりも「額」を選ぶ』では、「どうしたら利益が出るかを見える化する」

を副題として挙げている。

本書は、第1章から順に読み進めて行くのが理想的だが、各章の狙いから興味のある章を選び、読んでも有効である。

ただし、第1章については利益の基本の内容について説明しているので必ず読むべき章だ。

第1章 「率」よりも「額」を選ぶ ーどうしたら利益が出るかを見える化するー
第2章 変動費と固定費に分ける ー操業度によって変わる原価が見えるー
第3章 直接労務費は変動費と考える ー負荷と能力があっているかを見える化するー
第4章 負荷と能力を合わせる ー直接労務費を変動費化するアクションが見えるー
第5章 損益分岐点を計算する ー損益を分ける数量・売上高が見えるー
第6章 限界利益を使って意思決定する ー損か得かの判断を数字で見える化するー
第7章 付加価値向上をめざす ー顧客はどこに価値を感ずるかが見えるー
第8章 プロダクトミックスで価値をつける ー価値を生み出す製品・サービスが見えるー
第9章 設備費・固定費を低減する ー設備のどこにムダがあるかを見える化するー

各章と本のタイトルで示す通り、この本は経営数値の見える化をテーマにしている。

何をするにも現状が数値として見えないことには打ち手が出せないのだ。

そして、見える化により利益を増やすには「限界利益」とさらに大きな価値を生み出す「付加価値」が重要でありこれを見える化すること。

これが、この本の一番の狙いになっている。

この本『限界利益と付加価値』の基本情報

書籍名:見える化でわかる限界利益と付加価値
著 者:橋本賢一
発行所:日刊工業新聞社
2011年9月9日 初版第1刷発行
サイズ:15x1.4x21cm /219ページ

利益とは何か、そしてそれを最大化する方法は


この本はタイトル通り、経営数値の見える化によって利益を増やす方法を解説している。

この本を読んで学べるのは、目次からもわかるとおり

利益の出し方
変動費と固定費に意味
直接労務費の考え方
直労費の変動費化の方法
損益分岐点の計算方法
限界利益を使った意思決定の方法
顧客要望の分析
プロダクトミクスの方法
固定費管理の方法

など、利益創出に必要な知識を見える化という視点で紹介している。

 

この本がオススメの人


この本は会社の経営者や経理部門に所属するものだけに書かれたものではない。

ビジネスに関わる全ての人に必要な知識を解説した本である。

何故ならば、本書の「はじめに」にも書かれている通り、会社で働く全ての人は利益に向けて仕事をしているからである。

そのために、

・利益がどうして生まれるのか
・利益を増やすにはどうしなければならないのか

それをわかりやすく解説したのが本書である。

よって、この本が必要な人は会社のビジネスに関わる人全てだ。

・経営幹部
・部門長
・現場の管理職
・小企業のオーナー、マネージャー、起業家
・会社で働く全ての社員

 

利益を増やす方法は、分かっているようでいて、わからないことだらけ


懸命に仕事をしていれば、利益は自ずとついてくる。

そのな誤解をしている人は多いはず。

何を隠そう、僕も以前は何と無く、そう思っていた。

「これだけ売上が上がれば利益も上がるだろう」ついそう思いがちだ。

しかし、それは何と無くの考えであって、多くの人は経理部門がまとめた財務会計の数字でしか正確な数字を見ていない。

しかし、その数字でさえ決算期で初めて目にする過去の実績である。

結果が出てからでは何もできないのだ。

「あー今期は売上も利益も良かった」や「売上は上がったのに利益が少なすぎる」、「売上も利益も計画未達だ」と一喜一憂しているだけでは何もならない。

結果が出てからでは遅すぎるのだ。

これを改善するのが管理会計であり未来の利益を増やすためのものである。

この本を読むまでは、利益を増やすためにはどうすれば良いか、何となく分かっているような気がしていたが、それが全くの幻想だった。

ただ頑張ればいいということではない。

頑張り方にも方法がある、そして頑張った結果をリアルタイムで見える化するのがいかに重要かということがこの本を読むとわかる。

実際の事業への当てはめはそう簡単にはいかないと思うがこの本に書かれている内容は真理である。

理屈があって結果がある。

この極めて当然なことを教えてくれる本である。

難しいと思えることも優しく、丁寧に書かれているのでじっくり読むと、自分の知識として身につけることができそうな良書である。

 

まとめ:財務会計は現在の、管理会計は未来の利益を管理


この本は見える化という視点から、会社の事業成績=利益を的確に解説している。

「財務会計」が過去の利益を計算し、それを適正に配分することを目的とした会計であるのに対し「管理会計」は未来の利益を増やすことを目的に意思決定を助ける会計である。

というのはとても興味深い。

言われてみれば確かに当たり前なのだが、利益については財務会計視点の見方でしかみない人が大多数ではないのだろうか。

そして著者がこの本を執筆した一番の理由が、ごく簡単な事業運営の中でも意思決定が十分に作用していないと考えたからだ。

著者は「はじめに」の中でこう言っている。

『第1章では、普段の売り買いで起こる簡単な意思決定を問うている。こてに正解でき、その理由も正しく説明できたら、本書を読まれる必要はない、こう言い切るのは「いかに不正解が多い」からである。(「はじめに」より抜粋)』

ビジネスの仕組みは理解しているつもりでも、そうではないことが多いということだ。

 

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