松浦弥太郎って作家なの。
確か「暮らしの手帳」の編集長やってたよね。
COW BOOKSという個性的な書店も経営してるよね。
調べてみると、松浦弥太郎氏は文筆家で、書籍商、「暮らしの手帳」の前編集長
現在はcookpadの新サービス「くらしのきほん」編集長をしていると紹介されてます。
そう、作家ではなく”文筆家”なのです。
今回「日々の100」を紹介したいと思ったのは、この本はモノと人の思いを説明してくれる、初めての本ではないかと思ったからです。
「日々の100」は松浦弥太郎氏が日常使いの品を100個紹介した本
「日々の100」は、松浦弥太郎氏が日常、使っている品物を100個選んで、それぞれについて、その モノ との出会いやそれらとの付き合いについて書かれた本です。
それぞれの モノ を自身で撮影した写真と、その モノ にまつわる話を600字ほどで書きあげています。
完成までに半年を要したそうです。
本人も著書の中で言っていますが当初、100個くらいならと思って書き始めたが、その作業は尋常ではなかったと告白しています。
「日々の100」は『ナジャ』の冒頭の言葉がきっかけで書かれた本
松浦氏によると、この「日々の100」を書くきっかけになったのは、アンドレ・ブルトンが『ナジャ』の冒頭で述べている言葉だそうです。
「すべては結局、私が誰と付き合っているかを知りさえすればいい、自分はいったいどんな人間だろうか?」
で始まり、次の言葉に続いています。
「その人を知りたければ、そのひとがつきあっている親しい友人が誰なのかを知れば、ひとつやふたつは、その人の本性を垣間見れるだろう。少なくてとも人としての種類はわかる」
この言葉から、松浦弥太郎氏は、自分(松浦弥太郎)がどんな人間であるかを、自分の愛用するものを紹介することで、表現しようとしたのだと思います。
本人も、松浦弥太郎のことは、この本を読むことでわかるだろうと言っています。
「日々の100」は、モノの価値を見直すきっかけになる
松浦氏がいう、ものを知ればその人のことがわかるという言葉はとても重い響きがあります。
いやいや、 物 は所詮 物 、そんなことで人がどんな人間かわかるわけがないという意見も確かにあるかと思いますが、僕の周りを見渡すと、やはり モノ である程度その人のことがわかるような気がします。
「日々の100」を読むと、果たして自分が愛着を持って接することができるモノは何かと問割れているような気がします。
この本は自分が持つものを見直すきっかけとなる本です。
断捨離の基本はときめくか、ときめかないか
コロナ禍で在宅が多くなった影響か、断捨離がまたブームになっているそうです。
家の中を見渡して、不要なものを全て捨てるのが断捨離。
しかし、モノを捨てようとしてもなかかか決心がつきません。
そんな時は ときめくもの だけを残してそれ以外は捨てる。
断捨離の立役者、近藤麻理恵さんの言葉です。
捨てることに躊躇したら、そのモノが自分にとってときめくものかどかが残すか、捨てるかの基準になるということだそうです。
ただこの判断基準に従うと僕も妻に断捨離されかねないので、気をつけることにします。
モノの価値は値段ではなくそのモノに対する思い入れ
では、ときめくもの はどんなものなのか?
購入した金額が高かったもの=ときめくもの ということではないのは確かです。
やはり、ときめくのものは、それを見たり使ったりすることで気持ちを豊かにしてくれるそんなモノだと思います。
「日々の100」の中で紹介されているものが良いヒントになりそうです。
「日々の100」がオススメの人
この本は、モノに対する愛着、思いの強い方にお勧めします。
昔、”モノより思い出” というテレビコマーシャルがありましたが、 モノ だって大事です。
モノにはその人の思い出が詰まっています。
松浦氏は言います、
100のモノには、100の日々がある。
100の日々には、100の美がある。
この言葉に共感できる方にはオススメの本です。
「日々の100」がオススメじゃない人
物は最低限の機能があればいい。
思い入れも、思い出もない。
こだわりはなく、100均で揃えた道具で充分だと思っている方には、この本はおすすめしません。
本の中の物に共感できないのなら、この本の存在価値はないし、読んでいても退屈になるでしょう。
おそらくは、松浦弥太郎を好きになれないと思うからです。
「日々の100」を読んで思ったこと
最初、この本は物持ちの自慢話ではないかと思ってしまいましたが、松浦氏が語るひとつひとつの文章を見ていると、そんな気持ちは失せていきます。
モノとの出会いや付き合い方を語る文章が、心に響きます。
そろそろ モノ に対する執着心が薄らぐ年齢になってきましたが、これらの文章を読んでいると、いいものに巡り会える幸せを感じます。
いいものを自分のそばに置いておくのは間違えではないと思えました。
文章を読んでいるだけで自然と心が和んでくるのは松浦氏の文才のなせる技なのでしょうか。
文筆家と名乗っていることは伊達ではないようです。
繰り返しますが、この本を読みながら、モノ には、自分で触って、眺めることで気持ちを高揚させてくれる力があること、それを感じさせてくれます。
「続・日々の100」も出ています
松浦氏は100個の物語を書くのに苦労したと語っていましたが、この「日々の100」以降に、さらに続編を書いています。
2011年発行の「続・日々の100」です。
氏の母親の病気をきっかけに手を握ることの暖かさをモノにおいて考えたことで生まれた続編だと言っています。
「続・日々の100」は毎日、自分の手でさわってあたためている、身の回りの品々と自分との関係をエッセイとして記した一冊である。
「続・日々の100」、まえがきより
まとめ
モノの持つ力、お気に入りのものを持つ幸せをこの「日々の100」は気づかせてくれます。
「モノより思い出」ではなく「モノだって思い出」。
「日々の100」の基本情報
著 者:松浦弥太郎
発行所:株式会社 青山出版社
初 版:2009年3月29日