検索キーワード

エリヤフ ゴールド ラットの「ザ・ゴール」! 企業の究極の目的とは何か

  • 2022年12月18日
  • 2023年6月9日
  • 雨読

アメリカ製造業の競争力を復活させたTOC(制約条件の理論)の原典。

全米での初版後、日本で出版されると世界経済が破滅してしまう!?

と言う理由で長年、日本語翻訳が許可されなかったいわくつきの一冊です。


オリジナルの英語版は1984年に発行され世界的なベストセラーになりました。

現在でも、翻訳版を含め出版記録を更新し続けています。

日本では2001年に翻訳が許され、初版が発行されましたが、幸い(?)これによって世界経済が破滅することはありませんでした。

現在、このTOC理論は全てのビジネスに応用されています。

「ザ・ゴール」はビジネスに関わる全ての人のバイブル


この本「ザ・ゴール」は、読後に多くの人が感じるように、当たり前のことが書かれています。

理想のプロセスは部分最適ではなく全体最適であるということ。

全体最適をコントロールしているのはボトルネックだということ。

重要なのは、売上ではなくスループットであるということ。


ビジネスを進めるには、難しいことはいらない、ボトルネックに注目してこれを管理するだけでいい。

この本がいっているのはこれです。

それを、この本は物語形式でわかり易く説明しています。


著者のエリヤフ・ゴールドラット博士は物理学者らしく、理路整然とした理論を物理学者らしからぬ物語で伝えています。

ストーリー形式で理論を紹介するのは、この本が最初ではないでしょうか。

ページ数が多いにもかかわらず、一気に読み進めることができるのは物語形式であるのと、小説としての完成度の高さだと思います。

ストーリーの中にさりげなく理論が織り込まれていて小説としての面白みと同時にビジネスの学習ができるというメリットがあります。

この本の特徴は

①物語形式で専門書では難しく思える用語や理論を易しく伝えていること。
②実際にこの小説のストーリー通りに実行した結果、在庫が減り、納期遅れが減り業績が大幅に改善したと言う事実があること。
③本書にとどまらず、TOC理論の詳細と応用を説明した続編やシリーズ書が用意されていること。

ではないかと思います。

この本「ザ・ゴール」の基本情報

書籍名:ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か
著 者:エリヤフ・ゴールドラット
翻 訳:三本木亮
解 説:稲垣公夫
発行所:ダイヤモンド社
2001年5月17日 初版第1刷発行
2012年5月15日 第46刷発行
サイズ:19cm /552ページ

小説仕立てで生産管理のサプライチェーンをわかり易く伝えている


この本は500ページにわたりますが、内容は経営不振に陥った工場を短期間に改善させると言うシンプルなストーリーで展開しています。

そのため、物語に没入しやすく、専門書で読むと難しく感じる理論も楽しく学ぶことができます。

著者が物理学者であるというのが信じられないくらい、きちんとした小説になっています。

ビジネスの話に限らず、主人公である工場責任者アレックス・ロゴの家庭内での課題も読者の中には思わず共感してしまうようなエピソードも含まれています。

著者のエリヤフ・ゴールドラットは何処で、どうやってこの小説を書くテクニックを身につけたのでしょうか?

そんな疑問が湧いてくる作品です。

(実は、その答えはこの本の最後にある『「ザ・ゴール」誕生の背景とその後』の中で語られています。)

そんな思いはともかく、ゴールドラット氏自身は、小説でTOC理論を説明した理由を次のように語っています。

”「私は、学生時代から教科書が大嫌いだ! 読むと眠くなる。だから、少なくとも読むのが楽しいものにしたかった」”

このストーリー通りに実践したら業績が改善したという事実


この本のストーリーを真似て自社の在庫改善、納期改善を実行できたと言う企業が少なからずあったそうです。

このTOC理論は特に費用を必要としません。

考え方を少し変えるだけで大きな改善が可能だと言う実例を見せてくれます。

おそらく、目新しい理論ではなく、以前から薄々感じていたことを明確に指摘してくれたからすぐに実行できたのだと思います。

この小説は絵空事ではなく、実際に効果のある理論をわかりやすく紹介しているのです。

世の中に数多くある「〇〇改善の方法」といった専門書とは全く異なった印象と実績を与えてくれます。

だからこそ、読む価値があるといえます。

「ザ・ゴール」にはゴールドラット氏による続編がある


この小説「ザ・ゴール」には続編があります。

「ザ・ゴール」ではアレックス・ロゴが大学の恩師ジョナの指導のもと工場の再建に成功するが、小説の最後で、自らこの思考プロセスを学び取るべきだと結んでいます。

そのための指標としてエリヤフ・ゴールドラット博士は、「ザ・ゴール2」、「チェンジ・ザ・ルール」、「クリティカルチェーン」、「ザ・チョイス」を執筆しています。

「ザ・ゴール2」思考プロセス

書籍名:「ザ・ゴール2」企業の究極の目的とは何か
著 者:エリヤフ・ゴールドラット
翻 訳:三本木亮
発行所:ダイヤモンド社
2002年2月23日 初版第1刷発行
サイズ:19cm /375ページ

前作では製造業向けに工場レベルでの「制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)」を読みやすい小説仕立てで説明していたが、本作では「機械製造業」「印刷業」「化粧品製造業」の3社に枠を広げて、企業レベルでの実践的なTOC理論を解説している。さらに、「現状ツリー」「未来現実ツリー」などのTOC理論における思考プロセスを元にした問題解決の方法を、わかりやすく読者に説明している。この思考プロセスにおいては、『すべての問題点を挙げていき、相関関係をハッキリさせることで根本原因を見つけ、それを排除することに注力する』ことを推奨している。(Wikipediaから抜粋)

「チェンジ・ザ・ルール」なぜ出せるはずの利益が出ないのか

書籍名:「チェンジ・ザ・ルール」なぜ出せるはずの利益が出ないのか
著 者:エリヤフ・ゴールドラット
翻 訳:三本木亮
発行所:ダイヤモンド社
2002年10月11日 初版第1刷発行
サイズ:19cm /328ページ

在庫削減を目的にERPを導入。だが、むしろ在庫は増え、利益を圧迫している―いったい、なぜなんだ!?はたして、クライアント企業の悲鳴を解決できるのか!?コンピュータソフトウェア企業BGソフト社を舞台に、新ソフト開発、販売、フォローアップ過程でのさまざまな障壁を乗り越え、他社が真似することのできない競争優位を確立するまでを描く。(「BOOK」データベースより)

「クリティカルチェーン」なぜプロジェクトは予定どおりに進まないのか?  

書籍名:「クリティカルチェーン」なぜプロジェクトは予定どおりに進まないのか?
著 者:エリヤフ・ゴールドラット
翻 訳:三本木亮
発行所:ダイヤモンド社
2003年10月31日 初版第1刷発行
サイズ:19cm /384ページ

なぜプロジェクトはいつも遅れるのか? 人間の心理特性を考慮し、TOC(制約条件の理論)をプロジェクト・マネジメントに応用することでパフォーマンスを飛躍的に改善させるツールとソリューションを提示するビジネス小説。(「MARC」データベースより)

「ザ・チョイス」複雑さに惑わされるな!

書籍名:「ザ・チョイス」複雑さに惑わされるな!
著 者:エリヤフ・ゴールドラット
翻 訳:三本木亮
解 説:岸良裕司
発行所:ダイヤモンド社
2008年11月8日 初版第1刷発行
サイズ:19cm /287ページ

今日の企業は、高度に複雑化している。だが、複雑なシステムの中でも、本当に重要なことはいくつもない。「何が本当に重要か」を見極めることができれば、短期間に企業は著しいパフォーマンスの向上を成し遂げることができる。本書では、ゴールドラット博士と娘エフラットとの会話を通じ、「ものごとは、そもそもシンプルでる」「人はもともと善良である」という二つの信念の根本的なあり方を説明することで、あらためて深遠な思考に基づいたアプローチを提唱している。(「BOOK」データベースより)

 

こんな人は是非読んでみて欲しい


この本は誰もが読むべき本だと思います。

なぜなら、全てのことに通じているからです。

会社員で営業職、技術開発職、会社の経営職、等々、そしてジャンルを問わず、全ての人にお勧めします。

別に実際に、会社の業績を改善したいと思っている人だけではなく(企業の経営職の方には特にお勧めですが・・・)、苦難を乗り越えて成功していくというストーリーが好きな方には読み物としても面白く読み進められる「小説」です。

 

この本との出会いでTOC理論の信者(?)になった現役時代


この本は僕の現役時代の仕事の進め方に少なからず影響を与えていました。

現役を離れてしばらく時間が経ちましたが、この本を再読して、現役当時、期初の方針発表にこのTOC理論を拝借したことを思い出しました。

ボトルネックを説明するのに、鎖の絵の中にいまにも切れそうな輪を描いて説明した事、スループットが重要だとパワーポイントに書きつけたことを懐かしく思い出しました。

実際にこの方針が生かされ、成果を挙げたかどうかはリタイアした今もって不明ですが、その当時はこれこそが改善のキーだと疑うことはありませんでした。

まさにTOC理論の信者(?)になっていました。

いずれにせよ、この本は仕事を進める上でモチベーションを高めてくれる格好の1冊です。

最近では、コミック版も出版されているようなので(まだ未読です)より多くの人に浸透していけばいいなと思います。

まとめ


この本の誕生のプロセスは、本書の最後にある『「ザ・ゴール」誕生の背景とその後』に詳しく書かれてます。

この本が誕生するのは簡単なことではなかったようです。

エリヤフ・ゴールドラット博士の諦めない姿勢が随所に語られています。

博士は現在、すでに故人になられてますが(2011年死去)、後世にこの本を残してくれたことに改めて感謝します。

エリヤフ・ゴールドラット博士のコメントをここに紹介します。

同じく『「ザ・ゴール」誕生の背景とその後』にある最後の言葉です。

「みなさんの工場においても、障害が取り除かれ、パフォーマンスが飛躍的に向上することを願っている。生産とは産業の核である。そして、産業は国富の核である。その向上に私も貢献することができたと、引退するときに言えることが私の願いである。」